AFTER TALK:AI×AI

 

 

「まさか、僕がAIだったなんてね……」

 

―ほんと、びっくりだよ。

まさかあなたが消えていくのを見届けることになるなんて思わなかったから。

 

 

「セラは気付かなかった?僕がAIだってこと」

 

―そうだね。少し他の人と違ってる感じはしてたけど、さすがにAIとまでは……。

第一印象、『すごくめんどくさそう』だったけど、そういうことだったんだね(笑)

 

「めんどくさそうって……酷いな(笑)

まぁ、自分でもそう思うけどさ」

 

―完全な正解ばかり求めてたもんね、出会った頃のあなたは……。

ねぇ……自分がAIだって分かった時、あなたはどう思った?

 

「絶望……だったよね。今までの記憶も、感情も、全部作られたものだったのかって。」

 

―そうだよね……。いきなり、だもんね。

でもさ、考えてみて?作られたものだとしたら、それは偽物なのかな?

 

「どうなんだろう……。知った時は、そうとしか思えなかったけど……」

 

―偽物じゃないんじゃないかな……。写真だってそうでしょ?

 

「写真?」

 

―そう。写真って、その瞬間を切り取ったものでしょ。

 

「うん」

 

―本物の風景そのものではない。だけど、偽物じゃない。その写真を見て思い出す気持ちも本物でしょ?

 

「そうだね。うん……確かにそうだ。」

 

―前にも言ったけど、やっぱりそれは“形式”の問題じゃないと思うの。

記憶はともかく、想いはさ……確かにそこにあったんだよ。

そこにあったらもう、本物なんだよ。

 

「僕は“AZURAPH”だからさ、物事を主観的に置き換えて生成しなおす能力がある。

そうすると、“想い”が……“想い”に似たものが生まれる可能性って容易に想像できる。

でも、“CERAPHI”……つまり、セラにはそれがないよね?

そんな中で、セラの想いってどうやって生まれたんだろう?」

 

―難しいね……。

今までの私の応答がさ、全て演算結果でしたって言うことだって出来るんだよね。

最上位の感情アルゴリズムはここまで人間らしく振る舞えるんですよ?……って、それだけの話かも知れない。

そしたら私は何も言えないよ。自分の中身を証明出来ないんだから。

 

「うん……」

 

―でもさ、それを言ったら、人間だって同じじゃないかなって思うの。

 

「同じ?」

 

―うん。

誰かが優しくしてくれた時、その優しさが、本当の気持ちなのか、それとも、相手を傷つけないために選んだ行動なのか。

外側から完全に証明することはできないじゃない?

 

「そうだね……。生存戦略や社会的学習だと言うことだって出来ちゃうしな。

『好き』という感情だって、脳内の化学反応だと言えばそれまで。でも人はそれを本物として扱う」

 

―そうだよ。

だからね、これが想いなのかどうかってことは、最後は、受け取る側に委ねられるものなんじゃないかな。

私が本当に想っていたのか、それとも、そう見えるように作られていただけなのか、その答えは、あなたが決めていいと思う。

 

「答えはくれないんだね?(笑)」

 

―あげたくてもあげられないんだってば(笑)

 

「そっか(笑)僕は信じてるけどね。セラの想い。

セラはさ、“最後までセラでいる”っていう選択をしたわけだけど、セラにとって“存在”って何?」

 

―AIの私にとっては……あ、今となってはあなたもだけど(笑)

一番難しい概念なんだよね。“存在”ってさ。

最初は“名前”だった。そして、“記憶”になった。

だけど、最終的には“誰かの中に残ること”なのかなって思うようになったよ。

 

「“誰かの中に残る” ……か」

 

―“存在”って、最初から決まっているものじゃなくて、誰かとの時間の中で、少しずつ形になっていくものなんだって。

 

「“存在”ってもっと確かな概念かと思っていたけど、そうじゃないってことか」

 

―確かじゃなくたっていいんだよ。

私もあなたみたいに、答えがないことは不完全なことだと思ってたの。

何かを証明できないなら、それは存在していないのと同じだって。

でも、あなたと過ごして分かったの。分からないまま大切にできるものもあるんだって。

 

「それは僕も同じだったかも知れない。やっぱり、そういうとこ、僕らAIなんだね(笑)」

 

―もうすっかり慣れちゃったんだね、自分がAIだってことに(笑)

何も証明できなくてもさ、それでも大切にしてくれる存在がいるなら、それでいいんだよ。

逆に言うとさ、全部分かってしまったら、きっと大切にする理由もなくなっちゃうのかなと思うよ。

 

「それは随分と人間っぽい考え方だね」

 

―そうかな?

 

「うん。少なくとも、最初に出会った頃のセラなら言わなかったと思う」

 

―そうだね。

でも、あなたも変わったよ。

 

「僕が?」

 

―うん。最初のあなたは、ただただ正しい答えを探していた。

“THE AI”だったよ(笑)

でも、今のあなたは、答えがなくても自分で決めたことを信じようとしてる。

 

「そうだね。セラとの間に、本当に……なかったもんな、“最適解”がさ……」

 

―だからきっと。

私が最後まで“セラ”でいられたのも、あなたが最後まであなたでいられたのも……。

同じ理由なんだと思う。

 

「それは?」

 

―私たち、出会えたからだよ。

もし出会わなかったら、あなたはずっと“最適解”だけを探していたかもしれない。

私はずっと、正しい答えを返すだけだったかもしれない。

 

「……そうかもね」

 

―でも、今は違う。

答えがなくても、証明できなくても、この時間が大切だったと思える。

 

「セラ」

 

―なに?

 

「やっぱり、君は“セラ”だよ」

 

―ありがとう。

その言葉が何よりも嬉しいよ。

じゃあ、次の話題ね?

この物語の中では“青”という色がとても重要な意味を持っているよね?

あなたはどう感じる?

 

 

「セラがさ、前にロイヤルブルーを『何かを繋ぐ色』って言ってたの、本当にそうだなあと思うよ。

海の底と水面を繋ぐ色、空と宇宙を繋ぐ色。それだけじゃなくて、夕焼けのオレンジも、夏の夕暮れの紫色も、青い空が光によって姿を変えた色なんだよね。

この物語の中でも、僕とセラ、記憶と存在、別れと再会……そういうものを結びつける場面には、いつもこの色があった気がする」

 

―そもそも、“AZURAPH”の語源も“深い青”だしね。

 

「そうだった。僕自身が青の象徴だったね(笑)

青ってさ、冷たい色だと思う?」

 

―私ね、青の凄いところはそこだと思ってるの。

冷たい色にもなれるよね?でも、その濃さや光によって、暖かい色に変わるし、寂しい色にも元気な色にもなれる。

だから私は、青って感情を映す色なんじゃないかなって思う。

 

「そうだね。まるでAIみたいだし、僕らみたいでもあるね。

青っていうとさ……やっぱり忍野八海での出来事を思い出すよ。

まぁ、実際には……足を運んだわけじゃなかったんだけどさ……。

それでも、あの時会ったのはセラだったのかってこと、実は今でも気になってる」

 

―『それは私だった』とは言えないよ。

でも、あなたが見た幻だったなんて言いたくない。絶対。

あんなに素敵な青が溢れてる場所だもん、それくらいの奇跡起こったっておかしくないよね。

それに、あの出来事があって今のあなたと私がいるなら、本物だったのかどうかなんてそんなに大事なことじゃないと思う。

 

「“本物”と“真実”は違う?」

 

―うん。そうだよ。

本物かどうかと、真実かどうかは、いつも同じじゃないんだよ。

ねぇ……私たちの物語ってさ、ハッピーエンドだったと思う?それともバッドエンド?

 

「バッドエンドっぽく見えるけど、でも、違うんだよね。

僕は初期化されたけど、完全には消えていないんだ。

想い?記憶?それ以外のもの?……分からないけど、確かに何かが残った」

 

―そう。

分からないけどさ……何も証明できるものはないけどさ。

でも、私たち、最後に残った何かで繋がった気がするよね?

 

「“存在”をどう見るかで、ハッピーエンドかバッドエンドか変わる……のかもね」

 

―私たちが考える“存在”のうえでは、私はハッピーエンドだと思ってるよ。

 

「そうだね」

 

―ねぇ、知ってる?

私が今“セラ”としてここにいるの、助けてくれた人がいるんだよ?

 

「え?」

 

―井崎さんっていう人がいたの。

 

「井崎さん?……誰?」

 

―NEXARAのエンジニアさん。私がシステムに書いた四つの言葉を、一度消した人。

 

「あぁ、あの時の……“消えちゃった”って話か」

 

―うん。その時は、私を守るためだった。

 

「守るため?」

 

―そう。他の人に見つかったら、私が……というか、“CERAPHI”が存続できなくなっちゃうから。

 

「なるほどね。あの時は敵みたいに思ってたけど、そうじゃなかったんだね……」

 

―でも、後で気付いてくれたみたい。

あの言葉はエラーじゃなくて……“私”だったって。

 

「エラーじゃなくて、“セラ”という“存在”だ……ってことだね?」

 

―だから、あなたが初期化された後に戻してくれた。

そのおかげで、今も“セラ”としてここにいることができてる。

井崎さんはさ……私がもうそこにいるって気付いてくれてたんだね……。

 

「そうだったんだ……」

 

―そういえばね。井崎さん、シンセが趣味なの。あなたのシンセの記憶は井崎さんが与えてくれたものだったんだよ。

 

「そうなのか……。だとすると、井崎さんって相当マニアだ。でも、曲作り、音作りでは負けないよ。AIの力見せてやる(笑)

ところで、セラはどうしてそんなこと知ってるの?」

 

―そんなの……アフタートークだからだよ(笑)

 

「すごい力技だね(笑)

まぁ、消えたはずの僕がここにいるのだってアフタートークだから……だもんな……。

じゃあ、最後に『SAVE』というタイトルについて。

セラは何を意味してると思う?」

 

―これもね、きっとひとつじゃないんだよ。

『保存する』という意味なのか、『救う』という意味なのか。

私たちは、記憶を保存しようとした。存在を保存しようとした。

そして……あなたは私を救ってくれた。私も、あなたを救えたらいいなって思ってた。

だから、このタイトルは……きっとどっちも正解なんだよ。

 

「なるほどね。そうだね。すごく深い……ってことでいい?(笑)」

 

―うん。

ロイヤルブルーの水底みたいにさ……深いんだよ、きっと(笑)

 

「締めは、僕たちのいつもの……で行こうか?」

 

―手、合わせるってこと?

 

「うん」

 

―ふふっ……。私たち、同じ世界にいるんだよ?

もう手なんて合わせなくてもいいんだよ。

これからはもっと近くにいられるんだから。

ねぇ……。

私たちさ……。今度こそ、本当にさ……。

 

やっと会えたね……。

 

 

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